Calendar

<< 2023/9  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

記事一覧

No Subject

2023.09.30 (土)

疾風怒濤の9月が終わります。

9月19日は、来年度のWAM助成申請締め切り。
私たちと連携している当事者支援団体の皆様、そしてそれぞれの支援団体が支援してある当事者の皆様の顔を思い描きながら、書類作成に全力を傾けました。
困難を抱えるこどもの文化体験保障のためにも、是が非でも申請を採択させたい。
そんな想いで、ぎりぎりまで申請書文言の見直しが繰り返されました。
採択結果発表は、1月の予定です。
採択された場合、来年度は5団体と連携することになります。

それ加えて「さちの物語」稽古。現在第2クール真っ最中。

その舞台装置は、いよいよ塗りの段階。人形製作も進行中です。

さて、そんな中。

昨日は、田主丸の水分校区人権講演会にて、「一郎くんのリススタート」公演と対話のひろばを開催しました。

主催は水分校区人権啓発推進協議会様。
私たちを呼んでいただき、ありがとうございました。
それから参加された皆様、対話のひろばで御発言いただいたことまで含めて、ありがとうございました。
あらためて御礼申し上げます。

さて、私たちは観劇後の対話のひろばを、あちこちで開催してまいりました。
ですが、参加された大人の皆様と私たちとの間で行う対話のひろば開催。これははじめて。
であるが故に、十分に準備を重ねて臨みました。

そして、あらためて思ったのです。
対話のひろばは何かをレクチャーする場ではなく、私たちと観ていただいた方々との「双方向でのコミュニケーションと気づきあい」の場なのだと。
それは、「お互い同士の傾聴しあう土台の上に成り立つデリケートな場でもあります。

啓蒙ではなく、気づきの場。

大変ハードな1日でしたが、様々の方々とお会い出来て、とてもよい時間となりました。
参加された皆様にとっても、よい時間であったことを願っております。

【釜】






福岡の久留米の地での人形演劇

2023.09.19 (火)

柿の実が薄くオレンジ色に色づいています。
毎日30度を越える毎日ですが、秋がだんだんと姿を見せてきました。

さて、秋が来ると冬がやってくる。

季節変化のスピードと新作「さちの物語」完成に向けてのスピードがほぼ一致したまま、毎日を送っています。
ですから、季節の変化は私たち上演班に焦りをもたらします。
稽古が加速化しています。

でも。

4時間稽古するとすれば、1時間はいつもミーティング。
稽古予定の各シーン各プロットで、「何を、どうやって表現するか」を納得するまで細かい打ち合わせをします。そして、やおら稽古開始です。

気がつくとそこまでで1時間がたっている…。
そんな感じです。
稽古時間とは、何をどうやって表現するかの実験工房でもあるのです。

さて、現在「さちの物語」は第2クールに突入。
物語と各シーンが輪郭を現して来ました。
第2クールでは、輪郭をくっきりと描き、それをブラッシュアップするつもりです。

クライマックスは、主人公さちが仮面をとるところ。
このドラマは、被虐待児童さちが身を守るために被ったお面をとる物語です。

被虐待経験をお持ちの方は皮膚感覚でお分かりでしょうが、虐待を受けると、人はお面を被るようになります。
そのお面で身を守ろうとしますが、それでは回復に結びつかないといえます。
ですから、この物語はお面をとる=回復=希望の発見の物語なのだと思っています。

さて、まとめに入りましょう。
私たちが日々福岡の久留米で創っている人形演劇。
それは、俳優劇と人形劇を組み合わせ。
それは、社会との緊張関係を失わずに表現をつくること。

私たちは私たちを苦しめてきたものの正体を見極めたい、その正体を見極めてもっと深く息をしたい。
その喜びを他者と共有したい。
だから人形演劇という手法を、自分たちで編み出しつつあります。

いま、福岡の久留米で姿を現しつつある「さちの物語」。
毎回3時間†6時間の稽古を、知的に、スリリングに、時に楽天的に、時に絶望して、創っています。

最後に補足ですが。

作品づくりの秘訣は、うまくいかない時に、それを見てみぬふりして回避する要領よさではありません。
「うまくいかない時の絶望とうまく付き合う」ことだと思っています。

そうしないと、作品の質があがらない。
そうしないと、作品が途中頓挫してしまう。

さあ、頑張っていきましょう!

【釜】






遺贈寄付シンポジウム

2023.09.11 (月)

桜の葉が散りはじめました。残暑の中にも、そっと秋が訪れています。

さて、一昨日の9月9日土曜日は、ちくご川コミュニティ財団様主催の遺贈寄附シンポジウムがありました。

劇列車は、昨年子ども若者応援助成を受けて、パペットシアターPROJECTを3ヵ所で開催しました。
そのご縁で、パペットシアターPROJECTの報告機会をシンポジウムの中でいただきました。
お陰様で、たくさんの方々にこの事業の成果を伝えることが出来て、嬉しく思っています。
お聞きくださいました皆様、私たちに声をかけてくれた皆様に、あらためてお礼申し上げます。

さて、遺贈寄付シンポジウムで私たちが得た成果、それは次のようなことです。

それは…。

様々な場所で、様々な人たちが、困難を抱えた子どものために奮闘してあるということ。
その発見です。

当たり前のこと言うなと思われるかもしれませんね。
私たち含めて昨年の助成を受けた団体から2団体、今年度助成を受けた団体6団体、合わせて8団体が一同に会したところで、私個人はあらためてそう思いました。

私たちもそうですが、活動を続けると、どうしても、のっぴきならない壁にぶつかります。
それを一つひとつ乗り越えながら活動は持続していくのです。

9月9日に一同に会した各団体様もそうかもしれません。
だからか、発言された皆様の一つのひとつの発言の背後に、壁を乗り越えてきた重みと、支援を続けてきた困難を抱えた子どもの息づかいが感じられるのです。

だから心の琴線に触れてくるのです。
だから爽やかな風がふいてくる感覚が生まれるのでしょう。

参加された皆様の今後の御奮闘をお祈りするとともに、私たち劇列車も頑張っていきます。
今後、お互い何らかの形で連携が広がっていけばよいですね!

最後に。

こういう場を設定されたちくご川コミュニティ財団の皆様に感謝するとともに、遺贈寄附をされた故F・S様の御意志に感謝申し上げます。

想いがつながり、それが広がることから生み出された奇跡。そんな素晴らしさを感じた1日でした。

【釜】






人形演劇さちの物語稽古の近況は?

2023.09.04 (月)

9月になりました。少しずつ朝晩が涼しくなってきています。

今日は新作「さちの物語~貧乏神とさちの物語」の進行状況の報告です。

繰り返しになりますが、初演は12月17(日)名古屋ひまわりホールです。
P新人賞2022受賞記念公演となります。
これはなかなかのプレッシャーですが、それもいい作品を生み出すための試練と思い、日々頑張っていますよ。

現在は、立ち稽古第1クールが佳境です。
来週中には、第1クールを終えて、第2クールに入れそうです。
第1クールを終えた各プロットがそれぞれに魅力を放っています。
いや、この段階で魅力を放たないプロットがあれば、ブラッシュアップのやりようがないのですから、これは当たり前。

長い脚本の練り直し期間をかけた脚本です。
脚本初稿完成から、読み稽古や半立ち稽古を断続的に挟みながらの書き直し(練り直し)期間は、約1年間。

その甲斐あってか、ドラマ自体が強靭なものになっています。
かつ魅力的なものに。

この作品のいくつかの特徴をあげてみます。

■主人公の中学3年生「さち」の心が、さちの小学校4年生時のさち(人形)との対話で表現されています。
舞台空間を緊張させる対話(さちの自己内対話部)が生まれています。

■ドラマの展開では、民話「貧乏神と福の神」のラストシーンの3回にわたる反復が行われます。そして同じラストシーンが、少しずつ変化していきます。
それは、さちの心の変化でもあるのです。
人形劇表現独自の面白さが、だんだんと生まれています。

■そのドラマを支える小道具が、退部届とノート、そして仮面。この三つが、ドラマを効果的に支えそうです。
最も仮面のデザインは試行錯誤中ですが…。
大切な試行錯誤です。

さて、本作品製作にあたり、いろんな方々と対話する機会を得てきました。
そこで見えて来たことは…。

この作品はDV被害者「さち」の被害そのものを描いているのではないということです。
DV被害者「さち」の生きがたさと回復を描いた物語なのです。
そうやって、静かにDV被害の深刻さを淡々と描き出しています。

もちろん、DV被害の影響は長く長く続きます。
しかし、主人公さちは、確かに、長く続いていくであろう回復のきっかけを掴むのです。
そんなドラマであることが、はっきりと見えてきています。

決して声高にDV被害を告発する作品ではありません。
さちの生きがたさ(人間関係づくりの困難さ)から、DV被害の深刻さが見えてくる作品です。

劇列車作品の中では久しぶりに、俳優劇に最接近した作品でもあります。

皆様、どうか御覧ください。久留米での初演は、来年3月。石橋文化センター小ホールです。

【釜】






夏の人形劇巡回、福岡のあちこちで

2023.08.25 (金)

昨日で夏の巡回公演を無事に終えました。
そのラストステージは城島町の学童保育所様。「一郎くんのリスタート」での上演でした。

筑後川の堤防道をずっと下流の方へ。
車を走らせて、向かった先は美しい田園に囲まれたコミュニティセンター。
大川市との境に近いところです。

コミュニティセンター職員の方の温かい心遣い、支援員先生の心のこもった子どもたちへの語りかけ。
素敵な1日になりました。

特に私たち上演班にいただいた「素敵な職業(上演活動)ですね」との言葉。それは、滅多に言われたことのない言葉です。
私たちのしごとの意味を再確認できた嬉しい一言でした。

さて、夏の巡回公演の内訳は、「一郎くんのリスタート」上演が4ヵ所、ミニ人形劇上演と人形展示が1ヵ所です。
上演会場は、各コミュニティセンターのホール3ヵ所、公共ホール会議室1ヵ所、小学校体育館1ヵ所です。

そして私たちは、今夏の巡回公演で、ある大切な気付きを得たのでした。
それはこういうことです。

巡回作品「一郎くんのリスタート」は、P新人賞2022受賞作です。
日本児童青少年演劇協会主催の劇作家養成講座でも評価を得た作品でもあります。

そのような完成度の高い作品を、巡回先に持ち込むことで見えてきたことは?

それは「作品は必ずしも分かりやすいとは言えない。だけどそれでいい」ということ。
「自信を持って臨んでいい」ということ。

小学校1年生に、この作品の主題を捉えてもらうのは、確かにムリがあるかもしれませんね。
しかし侮ってはいけません。
言葉に出来なくとも、直感的に捉えている可能性は否定できません。
また作品の完成度で、表現それ自体を楽しんでもらえます。
そんな様子がどこでも見られました。

これも鑑賞の一つのあり方だな…。
大切なことは、見てくれた皆さんがそれぞれに満足することだな…。

そう深く確信させられた今夏の巡回公演でした。

いささか乱雑なまとめ方ですから、意が伝わりにくいと思います。
ですがこの気付きは、私たちにとって大切な気付きでありました。
なぜなら「難しい」という言葉の方が、私たちかには聞こえてきやすいからです。
それは私たち上演班にも、微妙な影を落としてきます。

「難しい…」。

この言葉は、大人の方のほうがよくおっしゃいます。
もしかしたら、世の大人たちの多くは「分かりやすいもの」「楽しいエンターテインメント」を求めすぎているのかもしれませんね。
そしてその尺度に合わないものを切って捨てているような…。
そんな娯楽の消費者になることに、馴れてしまっているのかもしれません。

でも。

もし「楽しいエンタメ」しか存在しない社会になったら…。
それこそつまらない。
大切なことは、いつも複雑な顔と陰影を持っています。

それを可能な限り伝える努力をして、それでも残ってしまう「分かりにくさ」。
それは、そもそも立ち止まって考えるに値する大切なことが、おしなべて複雑な陰影を持っているからではないでしょうか?
そんなことを考えました。

私たち上演班は、いつも1回1回の上演を振り返りながら学んでいます。
そして季節毎の単位でみると、いつも認識の次元を刷新しています。

今夏、巡回先でお会いした皆様、大変お世話になりました。
どこの会場でも、皆様と交わしたさりげない会話から、私たちは多くの発見を得てきたのでした。
厚くお礼申し上げます。

【釜】






ページ移動